こんにちは、DENです。
記念すべき最初の記事は、単3形のNi-MH電池の放電装置です。1年ほど前に作ったものの紹介になります。
私は、電子工作でよくセリアで売っているこの単3型のNi-MH電池を使います。
Ni-MH電池は、充電して再使用のできる二次電池ですが、空まで放電せずに充電すると、次に放電するときに本来の容量を使い切る前に電圧が落ちてしまう「メモリー効果」という現象があります。そのため、できるだけ空まで使い切ってから充電するのが望ましいわけで、それを実現する回路を作りました。
空といっても電池の電圧が0Vということではありません。Ni-MH電池の場合、通常は1.2V程度電圧があり、容量が空になると0.9V程度まで落ちます。したがって、電池の電圧が一定値に落ちるまで放電を継続し、落ちたらそこで放電を停止する回路が必要になります。
今回の装置の要求仕様は、以下の通りです。
- Ni-MH電池4本を、空まで放電する
- 回路の電源は、放電対象の電池自身から取得する(別途ACアダプタなどを使用しない)
- 放電後に電池の電圧が復帰しても、再放電はしない
回路図
Battery4は、放電対象のNi-MH電池です。4本直列に接続します。4本直列なので、電池の容量が十分残っているときは、電圧は5V前後になります。
RLは、電池の電力を消費するための負荷抵抗です。今回は写真に示す通り5W10Ωのセメント抵抗を使いました。
Q2は、放電を停止するためのFETです。LED1は、放電中であることを示すLEDで、回路の働きそのものには関係ありません。
回路の動き概要
まず、電池を接続します。それだけでは放電は始まりません。SWを押すと、電池とRLが導通し、放電が開始しますが、ここで同時にQ1にベース電流が流れることによりQ1がオンになり、Q2がオンになります。SWを離した後もQ1とQ2のオン状態は保持されるため、放電状態で回路がラッチされます。
ここで、Q1がオンであるためにはQ1のエミッタとベース間の電圧がQ1のオン電圧以上であることが必要です。放電が継続し、電池の電圧が下がってくると、あるところでQ1のエミッタベース間電圧がオン閾値を下回り、Q1がオフします。すると、Q2のゲートに電圧が供給されなくなり、Q2もオフし放電が停止します。このQ1がオフする電圧が狙った値になるように、VR1を調整して使います。
放電が停止した後、電圧が復帰したとしても、SWを押さない限りQ1のベースに電流が流れないため、放電停止後に勝手に再放電されることはありません。
回路定数
細かい話です。興味ない方は飛ばしてください。
まず最初にRLですが、部品箱にあった5W10Ωのセメント抵抗を使いました。電池4本で4.8Vだとすると、480mA流れます。このNi-MH電池の容量は1300mAhと記載されていますので、1300/480で3時間くらいで空まで放電できることになります。実際は電池電圧の変化により電流が変動しますのでこの計算方法は正確ではありませんが、大体の時間は知ることができます。発熱については、電池電圧が6Vあったとしても6×6/10=3.6Wであり、定格以内です。
続いてQ1まわりの抵抗値についてです。Q1のベース電流は小さいとして無視すると、R3とVR1に流れる電流はほぼ等しいため、R3にかかる電圧はR3とVR1の分圧比で決まります。この電圧がQ1のベースエミッタ間オン閾値(約0.6〜0.7V)を下回ると、Q1はオフします。今回は電池電圧3.6Vくらいで放電を止めたいので、R3とVR1の分圧比は1:4〜5くらいにする必要があります。手持ちの可変抵抗が100kΩだったので、R3は10kΩとしました。
次にR2はQ1のベース電流が流れます。ここで、先ほどの計算でこのベース電流が小さいため無視すると仮定しているので、それが成り立つようにR2、R3、VR1を選ぶ必要があります。すなわち、ベース電流はR3を流れる電流よりも1〜2桁以上小さくなるようにします。今回は手持ち部品の関係でR2に10kΩを採用しましたが、もっと大きな抵抗とするか、あるいはR3とVR1を1桁小さくした方が良かったかもしれません。
最後に
冒頭で書いたように、私は作品の電源にニッケル水素電池を多用しています。どれくらい容量が残っているかわからない電池を充電したいとき、この放電装置で放電してから充電するようにしています。
自己紹介でarduinoやPICと言っておきながら、いきなりマイコンを使わないものの紹介となりましたが、私はこの回路のようなシンプルな動作原理の回路が好きで、よく作ります。部品が少なくて原理も単純、でも使えるって、なんかいいですよね。
ただトランジスタまわりの抵抗の計算などは、合ってるか不安なので、ご指摘あればコメントいただけると嬉しいです。
それでは、また。