DENKIグループ★電子工作ブログ★

趣味でガラクタ工作をやっています。作ったものについてまとめていきます。

TL431使用シリーズレギュレータ改良

以前、TL431とトランジスタで作るシリーズレギュレータについての記事を書きました。今回は、その回路をもう少し実用的にすることについて書きます。

前回の記事はこちらです。
denkigroup.hatenablog.com

この回路には実用上問題があります。「出力を短絡した時の保護がない」という問題です。

この回路はレギュレータです。なんらかの回路の動作確認をしたいときに、その電源を生成するために使う、などの使い方が多いでしょう。趣味の電子工作ですから、どこか間違って短絡してしまうことがあるかもしれません。そのようなとき、何も保護がないためにトランジスタに過大な電力がかかり、故障してしまう恐れがあります。

せっかくレギュレータを作って、簡単に5Vが得られるようになったのに、ちょっとしたミスで壊れては悲しいですよね。悲しいだけでなく、トランジスタが発熱、発煙したりすると危険です。

この問題を解決するために、一定以上の電流が流れると出力を遮断する回路を追加します。

回路図

大きな変更点は以下の2点です。

Q1をFETに変更

これは短絡保護とは関係ないのですが、レギュレータとしての定格アップのためにパワーMOSFETに変更しました。
Q1はバイポーラトランジスタ限定ではなくFETでも問題ありません。U1によってベース電流が調整されていたところが、ゲート電圧が調整されるという動作に変わります。
前回の記事でも書きましたが、ここに採用する半導体の定格で、レギュレータとしてのスペックが決まります。

R4、Q2の追加

これが短絡保護です。レギュレータの出力電流によってR4に電圧が生じ、それがQ2のオン閾値(約0.7V)を超えるとQ2がオンし、Q1のゲート電荷を抜く、つまりレギュレータ出力がオフになります。すると、R4の電圧がなくなり、またQ1がオンし…ということで、最終的にR4の電圧が0.7Vになる以上の電流は流れなくなります。
ここで、この電流と、このときにかかる電圧、そしてそれによる電力に耐えられるようにQ1を選定(放熱設計含む)しておけば、いくら出力を短絡しても壊してしまう心配はなくなるというわけです。

今回は入力は20V程度までを想定、R4=2Ωとしたので遮断電流は 0.7V / 2Ω = 0.35A となります。よって最大でQ1にかかる電力は 20V×0.35A で7Wです。
今回Q1に採用したのはサンケン電気のEKI04047。ドレインソース間の電圧定格は40V、ドレイン電流の定格は80Aで、電圧と電流は余裕をもってOKです。電力定格はデータシート上は90Wとなっていますがこれは無限大のヒートシンクを付けた場合の値(つまり現実ではあり得ない)なので注意。特性図を見てみるとヒートシンクなしの場合の定格は2W程度でしたので、ヒートシンクをつけて7Wに耐えられるようにしました。
必要なヒートシンクの熱抵抗の計算は、下記サイト様を参考にしました。

http://www.picfun.com/heatsink.html

https://www.mizuden.co.jp/heatsink-info.html

完成品

ユニバーサル基盤に実装しました。

測定

自作の電子負荷と、いくつか持っていたACアダプタを使って、入力と負荷を振って出力電圧を測定してみました。

  • 入力、負荷にかかわらず電圧を一定にできていますが、5Vではなく4.9V付近で安定しています。どうやらR2とR3に個体差があったようです。
  • 負荷を350mAにすると、出力が遮断されることを確認しています。短絡保護はうまくいったようです。