DENKIグループ★電子工作ブログ★

趣味でガラクタ工作をやっています。作ったものについてまとめていきます。

正負両方の電流を検出するアンプ回路

最近使った回路のメモ。

ややわかりにくいタイトルですが、他にいい表現が思いつきませんでした。

流れる電流値を検出するとき、検出用の抵抗の両端電圧をアンプで増幅するという構成にすることは多いと思います。
私は単電源対応のオペアンプを使ってよく以下のような回路を組みますが、この場合、矢印と逆方向の電流は一切検出できません。

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普通の反転増幅回路を使った場合。矢印と逆方向の電流は検出できない。

しかし、例えば「バッテリーの制御回路で充電と放電の両方の電流を検出したい」等、正負両方の電流を(両電源の回路にせずに)扱いたいというケースがあります。

回路図

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正負両方の電流を検出できるアンプ回路

何が変わったかというと、オペアンプの+入力端子がGND接続から、R4とR3による基準電圧(VDD)の分圧入力になっただけです。オペアンプの出力V_{out}は、以下の式になります。

V_{out} = -\frac{R_2}{R_1}R_5I_1 + \frac{R_1+R_2}{R_2}\frac{R_3}{R_4+R_3}V_{DD}

つまり、 \frac{R_1+R_2}{R_2}\frac{R_3}{R_4+R_3}V_{DD}を中心として、流れる電流に応じて上下に振れる電圧となります。

回路の原理について

我流ですが、私は次のように考えています。
まず、電流が流れていない I_1=0のときは、アンプの入力がGNDと等しくなりますので、オペアンプの+端子の電圧を増幅する非反転増幅回路と全く同じ形になります。この非反転増幅回路のゲインは \frac{R_1+R_2}{R_1}となりますので、出力電圧は+入力端子電圧をこのゲイン倍して、 \frac{R_1+R_2}{R_2}\frac{R_3}{R_4+R_3}V_{DD}になります。これが中心電圧です。
次に、その状態から、 \Delta Iだけ電流が変化したとすると、アンプの入力が R_5 \Delta Iだけ変化します。しかし+入力端子はこの変化によらず一定なので、交流的には接地されているとみなすと、回路は単なる反転増幅回路と同じと考えることができます。反転増幅回路のゲインは - \frac{R_2}{R_1}なので、電流変化分 \Delta Iに対して -\frac{R_2}{R_1}R_5 \Delta Iだけアンプの出力が変化することになります。これに先ほどの中心電圧を足して、V_{out} = -\frac{R_2}{R_1}R_5 \Delta I + \frac{R_1+R_2}{R_2}\frac{R_3}{R_4+R_3}V_{DD}となります。

お気づきかと思いますが、結局この回路は、オペアンプの誤差ともいえる「入力オフセット電圧」を意図的に与えているだけの回路です。

注意点

この回路だけではなく通常の反転増幅回路でも言えることですが、このようなアンプで電流を検出する場合、本当に検出したい電流を検出できているかに注意が必要です。
例えば以下のような回路構成としたとき、検出したいのは負荷に流れる電流(緑色)なわけですが、検出用の抵抗 R_5には緑色の電流に加え、他の制御回路の消費電流や、このアンプ自身の消費電流など(赤色)が流れます。

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本当に検出したい負荷電流に加え、赤色の電流を余計に検出する

これによる影響ですが、まず、中心電圧がずれます。赤色の電流の合計を I_Rとすれば、アンプの出力電圧の式からすぐにわかる通り、 \frac{R_2}{R_1}R_5 I_Rのずれが生まれます。制御回路でLEDやリレーなどの消費の大きい素子を使うと、ずれはより大きくなります。早い話が、式で求めた中心電圧の理論値は、実用上はあまりあてになりません。中心電圧値をソフトウェアで補正するなどの対策が必要になるでしょう。
補正をしたとしても、例えばLEDを点滅させたりして、消費電流に変化が生まれると、これまたアンプの出力電圧が変化分に応じてずれてしまいます。結局のところ、負荷電流(緑色)に対して消費電流(赤色)は、十分小さくしないといけないということです。