DENKIグループ★電子工作ブログ★

趣味でガラクタ工作をやっています。作ったものについてまとめていきます。

トランジスタ4つでSRラッチ回路

手持ちにロジックICがない!そんな時に。

SRラッチという回路

SRラッチとは順序回路の1つで、1ビットの情報を記憶できる回路です。「セット・リセット・ラッチ回路」でSRラッチです。

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SRラッチの回路図と、NORゲートによる実装

真理値表は以下のようになります。

S R Q /Q
0 0保持
1 0 1 0
0 1 0 1
1 1禁止

S端子かR端子がHighになると状態が変わります。S, Rが両方Lowのときは前の状態を保持します。すなわち、Q端子(または/Q端子)の状態によって、1ビットの情報を保持できるわけです。
詳しく解説したサイトは山ほどあるので詳細は割愛しますが、最も基本的な記憶回路の1つです。

ホビイストの電子工作家に身近なところでは、タイマーIC「NE555」の内部回路に登場します。

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NE555内部回路

トランジスタ4つで作ったSRラッチ

汎用NPNトランジスタの2SC1815と、抵抗だけで作ったSRラッチが以下です。

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トランジスタと抵抗だけで作ったSRラッチ回路

この回路は、双安定マルチバイブレータともいい、入出力の論理だけ見るとSRラッチと全く同じ動きをします。

Set Reset Q /Q
0 0保持
1 0 1 0
0 1 0 1
1 1禁止(Q=/Q=1になる)

Q2とQ1のトランジスタは、片方がオンになるともう片方のベース電圧が0Vになるため、もう片方はオフになります。Q3またはQ4のトランジスタのどちらかをオンすると状態を切り替えることができ、Q3, Q4をオフにしても状態が保持されます。実際にLTSpiceでシミュレーションしたものを下記に示します。
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このように、ロジックICを使わなくてもトランジスタと抵抗だけでSRラッチを作れるわけです。しかし、ロジックICと違ってアナログ回路なので、以下のような点に注意が必要となります。

  • 出力(Q, /Q)のHigh電圧は、完全なVCCにはならず、R1~R4で決まる分圧電圧となる
  • R1, R2はHigh出力時の、R3, R4はLow出力時の出力インピーダンスとなり、次段回路に影響する

具体的には、Q端子で考えると、出力Highレベル電圧は(VCC - 0.7V)をR1とR3で分圧した電圧になります。出力HighレベルをなるべくVCCに近づけるためには R1 << R3, R2 << R4 としたいですが、R1, R2を小さくすると消費電流が大きくなり、またR3, R4を大きくしすぎるとベース電流が足りなくなるので、うまく調整する必要があります。また次段回路の入力インピーダンスが低い場合は追加でバッファが必要になるでしょう。

で、何に使うのか

それが、問題です(笑)。

理想的にはこれをたくさん作ればメモリのようなものが作れると思いますが、8個作ってやっと1バイトですから、気の遠くなるような作業ですね。
私自身、ロジックICを使ったものをほとんど作らないので、ホビイストの電子工作での応用はあまり思いつきません。

無理やりな応用

手元にNE555がない!でも今すぐ必要!というときに、コンパレータICがあればこの回路を使ってNE555を組めます。冒頭で述べたようにNE555の内部回路にはSRラッチがあり、その部分をこの回路でディスクリートで組むわけです。
つまり、冒頭で紹介したNE555の内部回路のSRラッチを、この回路で置き換えます。そうして通常のNE555と同じように非安定モードで発振回路を作成したのが以下です。

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コンパレータICとSRラッチ回路で組んだNE555

赤丸で示した部分が、本来のNE555の端子部に相当します。シミュレーションしたところ、ちゃんとOut端子から発振波形が出ることがわかりました。
NE555が手元になくて、わざわざ入手するのも面倒…なときに、役に立つ、かもです(笑)